ボージョレ・ヌーヴォーに思う
数年前のこと。
甲府の馬酔木の先客にワインに詳しいらしい男性がいて、しきりにボージョレ・ヌーヴォーの話をしていた。
氏は自宅にワインセラーを持ち、年代ごとでは至高と言われるものを数本数百万かけてまとめ買いしているのだと酒場での自慢話。
ボージョレ・ヌーヴォーのことについては、いわく
あんな物はワインじゃないという。
元々飲めない類いの不出来なぶどうを教会の床で村の若い娘さんが素足で踏み潰し、収穫を祝ったのが始まりらしい。
解禁日が出来たのは、欧州の王侯貴族の類いが帆船を走らせその年最初のワインを誰が飲むのか競いエスカレートしていったのを防ぐ為に、とか。
その時に使用されたのがカティサーク号だった、とか。
アメリカス・カップも発祥はそれが起源だとか?
ちょっとマユツバだなあと思いながら酒場での自慢話を黙って聞いていた。
わたしは恒温恒湿室のワインセラーを人から頼まれ設計したことがあったので、それにプラスして耐震が必要な事を知っていた。
試しにくだんの氏に対して耐震はどのような方法を用いているのか訊いてみた。
揺れはワインを保存する大敵だ。
数百万かけてまとめ買いするぐらいだから大した設備なんだろうな、と思っていたらただの納屋に入れていると豪語していてずっこけた。
氏が店を後にした時、Nさんは酒場での自慢話がいかにつまらないものか切々とわたしに説いた。
お酒は自分が飲んで美味けりゃそれでいいんだよ。
旅先、どこかのバーで。
ロングアイランド・アイスティー。