幸せな想い出しかない島で
その島の想い出はどんどん遠くなるけれど
心はいつでもそこへ戻る準備が出来ている
カンヒザクラが散ったあとの早春
公園の前にある屋台を抜けて
階段を駆けあがって丘の上から街を見下ろした
その日は雨が降ったりやんだりの印象深い空模様で
傘を持たないわたしは階段のあたりに立ちすくんで景色と仕事をする人たちを眺めたり覗いていたりしたのだ
地表に落ちるちいさな雨粒と
テントに降り注ぐ雨音を数えたりしながら
なにもせず ただ眺めたり覗いていた
どこにいても、いつでもそこへ戻る事が出来る
幸せな想い出しかない島にまた悲しいニュース
みんな怒ったり
泣いたりしている
昨夜わたしは ふとあの島の首府にある居酒屋での出来事を思い出していた
基地の話しをお店のご主人としていたら、結婚式帰りのお客さん
お客さんは内地から来たわたしが基地の話しをしていることが我慢出来ないようで、ビール一杯ですぐに席を立った
内地の人間だって
東京の人間だって
島の事を考えていいでしょ?
悲しいニュースが流れていくたび陰影だけが濃くなっていく
留まる人たちには歴史だけが重くのしかかる
明るくて幸せな想い出しかない島をなんとかしたい
思っている