寝て曜日 深夜特急
この土日は天気がいまひとつと言うことも手伝い、咳の続く体調を気遣って養生につとめました。
寝て曜日と決め込んだ土日は買いためていた文庫を数冊か読む。
ソファーでコーヒーを飲みながら、夜はビールを少しだけあおりながら。
初出が1986年になるので、沢木耕太郎が実際に香港・マカオを旅したのはそれよりも5年も前の事になるんだろう。
旅人のバイブルと呼ばれる深夜特急なのだが、実用性や情報性は今となってはかなり怪しい。通貨レートもだいぶ異なるし観光地ともてはやされた場所についても今とはだいぶ異なります。
ただ、読み物としての出来栄え、叙情は捨てがたい魅力にあふれていて、わたしも今回の30年ぶりの香港行は多分に深夜特急にインスパイアされたものになりました。
30年前のそれは、取引先の企業慰安旅行に潜り込ませていただいたものであり、ただ人についていったものだから旅とは言えないものでしたね。
重慶大厦 チョンキンマンション
香港九龍の目抜き通りネイザンロードのチムサーチョイの賑わいにある雑居ビル。
この中には貧乏なバックパッカー向きの簡易宿泊所ゲストハウスが無数に点在していて、テレビ版の深夜特急でも描かれていました。
今回の旅では重慶大厦の両替屋さんにはお世話になりましたが、世界中からやって来るバックパッカーに混じってゲストハウス、ドミトリールームに宿泊する気にはなれませんでしたね。
それは今だからそう考えるのか?と言うより、バイクツーリングで各地を回って旅した若き日でも当時流行っていたユースホステルめぐりには興味を示さなかったので、旅先で似たような目的或いは似た境遇の若者の輪に入って行くことに嫌悪を持っていたんだと思う。
つまり若き日も今も、自分が個の存在である事を何故か強く意識していると言う事なんだろう。
それから多くの人に交わってそこの部分が変わったか?幸か不幸かそれはついぞ変わる事は無かった。
その代わりに自分でやれる範囲の旅を自分の責任の範疇で楽しんで来たし、人に惑わされることなく判断して過ごす事が出来ている。
若い時も今も、自分を人様から変に弄られるのは嫌だしね。
重慶大厦は映画チョンキンエクスプレス邦題『恋する惑星』でも描かれました。現代の重慶大厦にはチョンキンエクスプレスと言うショッピングモールが併設されているので恋する惑星が与えた影響は香港にもしっかり残されていて非常に興味深いものでした。
『裂けて海峡』志水辰夫
これは長い小説になるのでまた別の機会に紹介します。初出はやはり1983年と言うやや時代がかったもので、日本の戦後史観、と言うより志水さんの感覚が色濃く出ています。
面白い小説なので一晩で読み切りました。
それでは また